Scrumで顧客と共に成長し、変化に強い組織を作れ!!

実行委員座談会 1. 実行委員座談会 西村さん/吉羽さん/永瀬さん

川口: 今日は、あと3週間と迫ったスクラムギャザリング東京の実行委員の皆さんに、どういう人が企画しているのかとか、参加者の方にお勧めしたい情報などを聞き出すべく集まっていただきました。では自己紹介から。
西村: 西村直人です。永和システムマネジメント所属で、普段、最近はあちこちの会社さん、お客さんのところでアジャイル開発を教える仕事をしています。
吉羽: 吉羽です。僕がやっている仕事も西村さんと同じで、あちこちの会社に行ってアジャイル開発を教えている、同業です。ライバルでもなんでもなくって、同業です。
 
永瀬: ディアイスクエアの永瀬です。ちょっと前までは、社内でアジャイル開発チームのスクラムマスターでした。あとは社内でアジャイル開発を推進する、根付かせるということをやっていて、最近だと、アジャイル開発に興味を持ったお客さんのところでアジャイル開発をやりませんかと、営業、普及を。 
西村: アジャイル営業マン。
永瀬: まあ、営業みたいな。ほんとに提案書とかを書いてます。「こんなやり方できません。うちには合いません。」とか言われたり。
吉羽: 「だからだめなんです。」くらい言っとけと。
永瀬: そうだねぇ。 
川口: 吉羽さんは、結構硬派な営業スタイルですね。
吉羽: 硬派っていうか、僕は基本的には自分からは営業しないスタイルを貫いていて、なのでスクラムブートキャンプとかみんなでやるじゃないですか、そうすると名刺交換するけど、自分からは連絡しません、って言っちゃう。連絡したかったら連絡してくれれば相談に乗るけど、こっちからは連絡しないからと、完全にそのスタイルです。
吉羽: 興味がある人が連絡してくれた方がお互いやりやすいし、興味がない人に無理矢理話しにいっても、お互いに不幸じゃないですか。本当にやりたくて困ってて、もしかしたら予算がとれるかも、と思って連絡してくれる方が、お互いに幸せじゃないですか。
西村: 押し売りは、不幸を、呼ぶからね。
吉羽: 不幸の元だよね。SIもね。
川口: 押し売りはよくあるんですか?
吉羽: 業界的にはよくあるんじゃないですか?
西村: まああるんじゃないかなぁと。押し売りして困ったところに呼ばれることも多いので
西村: このやり方やるとうまくいきますよって提案書書いて、やりはじめたんだけど、自分たちではうまくできなくって「あのコーチとかコンサルタントに来ていただきたいです」といって呼ばれることがある。 でも行ったら、「まあ、がんばってください」といいます。僕を雇ったから、うまくいく訳ではない。お手伝いするだけなので。 
吉羽: コーチは基本みんな言いますよね。僕たち来たからなんでもうまくいく訳じゃない。結局やるのは自分たちだよ、っていう。

アジャイルを知っているお客さんが増えてきた

川口: 最近のスクラムとかアジャイルの案件で来てくれる人たちは、だいぶこう、アジャイルを知っている人たちが増えてきたと思うんですけども、何か変化はありますか?感じている変化はありますか?営業においてとか、プロジェクトを始める段で、なにか変わっていますか最近?
西村: そうですね〜。基本的な知識を教えることは減りましたね。そもそもなんぞや、みたいなことはあまりないんだけど。例えば、こんなプラクティスがありますよとか、こういう進め方をするんですよ、ということを一から教えることは少なくなったかな。まあやっぱり、みんなやるよ、そのプロジェクトに配属されるよ、ということになれば、あらかじめやっぱ自分で「これはなんだろう?」とかっていう興味をもつので。まあ、ある程度は調べて、調べた結果みんな不安に陥るんだけど(笑)。
永瀬: 大きい伝統的な会社さんの横串部門とかで、ちょっととんがっている人が「個人的にはすごく(スクラムに)興味があるんですよ」というお客さんが増えてきたんですよ。
川口: そのとき皆さんはどのように調べてるんですか?本ですか? 
西村: 基本的には、ググってる。Webの情報がやっぱり一番多いっぽいっすね。 
川口: じゃあみんな、Ryzee.comとかを読んで(笑)、 
永瀬: すごい読んでると思うよ。 
西村: けど、よくあるのは、Wikipediaみましたっていう....。 
吉羽: でも、あれだよね「塹壕よりスクラムとXP」とか、無料じゃないですか。しかもあれ一番いい本だと思うんだけど。全体としてのまとまりがいい。最初に読んだ方がいいよね。
川口: 13言語に訳されているらしいですよ。
吉羽: ねえ、すごい。その人が日本に来るっていうんだからすごいよね。 
西村: ようやくたぶん、日本でもそういうのが、あの本の価値がでてくるんじゃないかな。取り組み始めた人が、読んですごいわかりやすいし、その次に自分たちが何しなきゃいけないんだというのがわかる本なので。 
吉羽: 僕がコーチに入った現場だと、チームの読書会で、あの本をみんなで毎日読んでいろいろ議論してたよ。 
西村: 今回のイベントをきっかけにあの本を知ってもらえれば面白いかなと。 
吉羽: そう。そういう意味では今回参加者の人には特典があって、あれが本になって一人一冊お渡しできると。すばらしい。どこか出版社から売りませんか、ってこないかな。 
西村: でも、電子書籍とかとかだったら。 
吉羽: それだとタダで出てるから。 
川口: もうすでにPDFで出てますけどね。 
吉羽: みんな意外と紙で読みたがる。僕も紙にプリントして。 
永瀬: 私も持ってる。紙で。 
西村: オレも持ってた、紙で。 
川口: 私もそうですね。

アジャイルコーチの第一歩は、紙を使った見える化

吉羽: 紙って意外といいよね。アジャイルって紙大好きじゃん。 
西村: 基本的にね。 
永瀬: ものがあったほうがいい。 
川口: 紙だと共有スペースになるんですよね。2人で見たりとかできる。 
吉羽: みんな勝手に集まってきて場ができたりとかね。非常にいい。コーチの現場で行くと、まずカンバンボードを作るっていうのが結構王道っていうか典型パターンかな。 
西村: 見える位置に置いとく。 
吉羽: そうそう。会社のルールによっては貼り物できるできないっていうのがあるけど、そこはなんとか会社のルールに合う形でなんとしても貼ってくださいとおねがいする。 

スクラムとの出会い

川口: 各企業でのスクラムの認知度が上がってきた中での、今回初のスクラムギャザリング東京なわけですが、実行委員の皆さんにとっての、スクラムやアジャイルとの出会いや、始めたきっかけを教えてもらえますか。たぶん数年前とかだと思うんですけど。
西村: 最近昔のことが思い出せなくて。
一同: (笑)
西村: 明確には覚えてないんですよ。たぶんやり始めたのはXPで、2000年の頭くらい。そのこからずーっと、やってて、「アジャイル」という名前がついて、クリスタルとか、FDDとかやってて、スクラム。普通にアジャイルマニフェストに出てくる人の名前を見て、この人なにしてる人かな、とか調べてて。その後、自分の開発の仕事の中で、いろんなエッセンスを取り入れながら自分たちなりのアジャイル開発ができるようになってきたころに、「アジャイルな見積りと計画作り」の原著(2005年出版)を会社の中で読んでいて、プランニングポーカーとかやりだして。そのときに、出典をたどって、スクラムで「バックログ」という概念があることにたどり着いた。そこからちょっとずつスクラムに興味を持ち出して、2008年ぐらいに VersionOne のレポートを見て、北米ではスクラムが多く使われていることを知り、なんで普及しているのか、ということを調べ始めたんです。
川口: Version One というのはアジャイルのツールやトレーニングをしている会社なんですが、Agile Conference に合わせて、利用している開発手法のサーベイをするんですよね。で、2008年の調査で、スクラムがアジャイル開発のなかでトップに立った。
西村: そうですそうです。
吉羽: 僕の場合は、当時、大きいSIerでWeb系の開発を短納期でやっていて、ウォーターフォールでやっていると、トラブルが起きるんですよね。ギリギリになってから仕様が変わるとか。で、そのときの上司から、組織の生産性の向上をミッションをもらったんです。好きにやっていいから、なんとかしなさい、と。で、そのときのお客さん(金融機関)の役員さんから、「工場見学に行ったほうがいい」と誘われて、神戸にある松下電器(当時)のLet's Note と 島根富士通のFMV の工場に見学に行ったんです。
川口: ほう。
吉羽: 工場だと、あるプロセスの中で生産をしていて、工程ごとに品質のチェックをして、基準に合わない物があれば途中で振り落とされる訳です。でも、ソフトウェアだと、最後にたくさんテストをしなければいけない。誘ってくれた役員さんは「工場はこういう観点でこういう品質で作っているのに、どうしてソフトウェアは違うの、なにが違うの。この考えは持ち込めないの?」というんですよ。
川口: でも、普通に工場見学に言っても、その裏にあるチェック機構までは気がつかないですよね。
吉羽: そうそう。だから最初からそういう観点で工場を見なさい、という風に言われて見に行ったんです。そこで、トヨタ生産方式とか、リーンといった考え方、品質を手前で確保するとか、テスト駆動開発、CI(継続的統合)等につながっていくんです。
吉羽: もう一つの出会いは、うまくいっていなかった、ある案件があって、そのお客さん側の担当の方が、「毎週おれが動く物を見ればいいんだよね。毎週動くものを見せてくれ」と言い始めたんですよ。そこで、毎週レビューをし始めた。2005年くらい。当時スクラムという名前も知らなかったんですが。その後は頻繁に顧客に見せるようになったんです。途中から開発環境でお客さんに公開してましたしね。一括請負契約の中だと、あとで問題が見つかるほど危ないんですよ。
川口: 一括請負契約でも、早めにフィードバックを受ける方が危なくない、ということに気付いたんですね。
吉羽: そう。そのきっかけになったプロジェクトでは、そこまでは迷走していたプロジェクトが安定して、お客さんはリリース一週間前に「もうなにも(問題)ないや」と安心して夏休みとっちゃったんですよ。普段はリリース前には山のようなメールが届いたりしていたのに。
川口: それはすごい成功体験ですね。
吉羽: いい話でしょ。で、それがなんでうまくいったのか、というのを考えたときに「ああ、これがアジャイルか」と気付いたんです。その後、大手SIerを退職して、コーチに専念することにしました。
川口: では永瀬さん。
永瀬: 私はもともと開発チームを持っていました。チームワークで仕事をしていて、お客さんもある程度決まっていて。メンバーを固定すると、属人的なところも出てくるんですがそれなりに生産性も高くって。でも、それやっているとマンネリなんですよ。せっかくいいチームなのでもっとよくなりたい、と考えてたときに、アジャイルをやっているコミュニティの人たちに出会ったんです。それで、リーダーの私から提案して、スクラムを始めたんです。
川口: 永瀬さんが始めたい、といったときに、どういう風に勉強したんですか?
永瀬: それはね〜、ちゃんと教育を発注して、お金を払って教育を受けたんです。

スクラムギャザリングのおすすめセッション

川口: では最後に、スクラムギャザリングのおすすめのセッションを教えてください。
吉羽: ヘンリックさんの Day1 の基調講演がおすすめです。みんな変化が必要だと思っているけど、変化しろと言われれば抵抗する、という。これって僕らがコーチで行っているときも直面する問題で。今までの日本企業のやり方だと、画一的なやり方で画一的なプロダクトにたどり着いてしまうので、もっと組織でイノベーションを起こせるような形にしたいわけです。そうすると、これまでのコマンド&コントロールではないやり方、組織を変えて、評価も変えて、採用も変えて ... というところにたどり着くと思うんです。そういう話をヘンリックがしてくれるのかな、と期待しています。ですから、組織のについて悩んでいるマネージャや経営者の方に聞いていただきたいです。
永瀬: 初日と二日目がありますが、それぞれ想定の参加者が違います。一日目(19日)は、特にマネージャとか組織を中から変えていかなきゃいけない方に、いろいろな事例発表を参考にしていただきたいです。こんな会社もやっているんだ、ということを知っていただきたい。二日目は、特にデベロッパとか現場に近いマネージャの方のために4トラックものコンテンツを用意しましたので、どこかしらご自分の問題領域に掛かるところが見つかるはずなので、そこを見つけて参加していただきたいです。公式Webサイトに各トラックの情報を増やしていきますので、そこを参考にトラックを選んでください。
西村: いろんな人が「スクラム」というキーワードで集まってきますので、どの方もなにか持って帰れるようなコンテンツを一通りそろえたということが一番のポイントです。特に、いま一番多い「これからはじめたい」「はじめたばかり」の人たちにとっても、豊富な事例であったりとか、実際になにをしなければいけないのか、ここが僕が弱い、という点を学べるコンテンツを一通りそろえた、ということがおすすめです。
川口: こういう方々が企画している、スクラムギャザリング東京、皆さんぜひ足を運んでいただいて、なにかを持って帰ってください。今日はどうもありがとうございました。
一同: ありがとうございました。
2011年09月28日

本イベントに関する連絡先
【Scrum Gathering Tokyo 2011 事務局】 scrumgatheringtokyo@gmail.com

お電話やFAXでのご連絡は承っておりませんのでご了承ください。

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